「極刑(小倉日向)」☆自分のダークサイドの在りか

 

女子中学生の電車飛び込み自殺から始まるプロローグから衝撃的。

この人の小説はプロローグから目が離せなくなる。

 

子どもを持つ親としては、子どもが惨殺されるなんて小説の中であれ想像すらしたくないこと。

死刑や私刑や復讐について。

諦めること、受け入れること。自分のため、誰かのため。

同じ立場に立ったら自分だったら・・・。

想像はいくらでも出来ても、それすら揺らぎ続ける。

本当にその立場に立たないとわからないこと。

自分がどう感じるか。どう動いてしまうのか。自分がどうなるのか。

それは誰にもわからないこと。自分にすらわからないこと。

正解も不正解もない。

「そのひと自身」以外が口を出せることではない。

共感も反感もない。それでも。

答えはない。

 

ジャッジメント(小林由香)」を思い出しました。

 

重く辛い、少しグロい場面も確かに。

ラストは意外にも明るい。

一度は読んでよかったと思う。

自分のダークサイドをちらりと覗いたとしても。

 

【STORY】

娘を殺されながらも極刑を望まなかった半田龍樹は、妻とも別れ、小さな居酒屋を始めた。
一見、平穏に流れる日々―。だが常連客は知らなかった。龍樹の陰の"制裁"を。卑劣な罪を犯しながらも逃げおおせた者を執拗に追跡し、淡々と運命の引き金を引いていく龍樹。黒い血に塗れた両の手は、やがて思いがけない事態を引き寄せてしまう。人間のダークサイドを容赦なく抉り、読後はなぜか救われる衝撃のデビュー作。